2020年


2月島根
サンイン編

 
 2019年にカスミサンショウウオが9種に分類された。
私はヒバサンショウウオを除き、姫路より西のカスミ種群を観てない。
何が違うの?生息環境は?個体密度は?論文だけでは分からない事がある。
これは見に行かない訳にはいかないでしょう!
まぁ論文は読んでも英文だからあんまり分からないんだけどね笑

会社はサボり、4泊5日でサンイン、イワミ、アブ、ヤマグチを見に行く事にした。

   
   
 まずは仕事終わりにサンライズ出雲で島根県入りする。
ここではレンタルバイクを借りて探す事にした。
車だと移動は速いんだけど、後続車がいると良さげな場所で急に止まれなかったり
そもそも駐車ができない場所もあるんだけど、その辺がバイクはフリーで良い。
初めて行く場所で丹念に探したい時は有利だよね。
ただ雨だと最悪なのと荷物が邪魔。あと事故ると死ぬ可能性が高いw
まぁレンタバイクなんて地方じゃほとんどの場所で無いから借りる機会は少ない。

実際に肉眼で山の感じを見ながら生息していそうな場所にバイクを止めては
薮に分け入って探し、数か所で生息を確認する事ができた。
大体標高20m〜90mほどの場所で気温18度。

場所によって若干体色に変化があったけど、基本的には尾に黄色が顕著に出ていて
所謂カスミのイメージだが面積が大きく美しい....

   
 卵の様子
卵嚢の長さは約15cm。卵数は一房に45個ほど。落葉下や枯木に付着して産卵している。

 
 何か獣にやられた個体

足跡は確認してないが、大体こういった喰い荒らしたやり口はアライグマ。
発見時はまだ生きていた。何度も噛まれた痕があり痛々しい。
日本の両生類はアライグマから身を守る術をもっておらず
卵も成体もやられ放題で根絶しないと両生類にとって大きな脅威となり、日本の生態系は大きく狂う。
生態系が狂うという事は今ある食物(生態系サービス)が手に入らなくなる可能性があるという事だ。
生物は全て繋がっている。

イワミ編

 
 サンインを観た翌日、西へ移動する。

元々カスミサンショウウオとされてたグループで種として後肢が4指というイワミ。
同じ4指のヒバサンショウウオとは間違えようがないのでカスミグループを並べたときに
唯一種同定できる要素があるんじゃないの?ぐらいしか情報を持ち合わせてない。

見つけた(情報を聞いてあった)のは結構人が住んでる丘陵地。
探しづらい...いそうな場所を見たいけど車が後ろから次々来てしまい探しづらい....
道も広くないのでその場で駐車ができない...。割と広範囲に分布してるからもっと田舎で探すべきだったな...。
どうしたもんかと車を停めて地図見てたら「ここで何やってんの?」と苦情。
正直に山椒魚探してますって言ったら駐車場に停めさせてくれた。
仕事中の方、有難う!私はサボってますが!

まずは上の湿地で見つけたけど見ての通りゴミスゲェ。
気温17度。暑いし臭いし花粉が凄くて鼻水も止まらない。
水が少なくて2対あった卵も殆ど死んでいる。
亜成体の雌と思われる個体をトースターの下で発見。なんだかなぁ...。
割と奥行があって広範囲に探してみたけど、ここではこのゴミだらけの場所でしか見つからなかった。
ここが湧水の起点だからだと思う。


 不法投棄されたトースターの下で見つけた個体。
湿地はゴミだらけで汚ねぇけど個体は美しい...。
 
 2対あった卵嚢
イワミは小型種だが卵数は多い。この卵嚢は一房に約60卵入っていた。
卵嚢の長さは実寸で26cm

 
 人家付近ではあるが最初の場所よりも環境が良い場所で待機中の雄成体を発見。
しかしこんな湧水がそこかしこに湧き出る斜面によく家を建てるなぁ〜と思ってしまう。
地盤も粘土質だし...地震とか大雨ふったらヤバそうとか思わないのかな..?
 
 この場所で9対を確認。
標高50m、水温13℃
産みたての卵嚢はなく、産卵のピークは過ぎているように思われる。
卵嚢のサイズは最初の場所より小さく平均15cm。

アブ編

 
 翌日さらに西へと移動する。

目的はアブサンショウウオ。
大型で前肢が長く、体色や生息環境は高地型カスミのようだと聞く。
分布は比較的狭く、あまり見れる自信はなかったが予想に反して多くの繁殖地、成体、卵嚢を確認できた。

飯食う場所に困る程の場所だが、凄い田舎で良いとこだぁ〜。
観てきたサンイン、イワミよりも標高が高く、平均して400m程の山地の湧水溜りを好むように思えた。

   
   
 成体は旧カスミグループとしてはかなり大きい。
頭が大きく、前肢は確かに長い。尾に黄色の紋は出ず側偏も殆どしないようだ。
褐色の個体はオオイタサンショウウオを思わせる。
 
 銀灰色の地衣状斑紋が体側面に多く出ている個体(右個体、背面は黒っぽい))は
ハクバサンショウウオやホクリクサンショウウオ等に似ている。

同一繁殖場所に褐色系の個体と混在していたが割合は少なく感じた。
私が確認できたのは殆どが褐色系の個体群で一部このような体色の個体が混じる感じだった。
地衣状斑紋の割合が多い場所は確認できなかった。

   
 繁殖場の様子

意外と一時的に見える水場でも産卵が確認できた。
地質的な事か地面は砂礫などが混じり湿地で足が埋まらない場所も多かった。
水温は9.5℃〜15℃。標高が高い事もあってやや低い。

   産みたてで膨らんでいない卵嚢
   卵嚢は隠蔽傾向は強くなく水中の枝などにぶら下げて産み付けてある。
   成体と卵嚢

ヤマグチ編

 
 4泊5日最終日

島根から山口へ向かう。
最終日の探索有効時間は10−14時半までの4.5時間しかない。
目星を付けていた場所に向かうが土砂降りで何も分からんよ。終わった笑。

仕方なく土砂降りの中、車を停めては傘をさして谷戸を歩く
まぁ無理だなぁ〜と思ったけど12時頃に雨が止む。
急ぎ足で何か所もチェックするがいない!
ようやく見つけたのが14時15分。うぉ〜嬉しい!

卵は孵化間近で成体は確認できなかったが環境は分かった。
4泊5日サンショウウオの事だけを考えていた。
アラフィフにはキツイ日程だったけど最高ですな。
家庭がある人にはお勧めしない笑


3月 広島

 
 カスミグループで現認してないのは残すはアキサンショウウオ。

コロナウィルスがクルーズ船で確認されて、町でも数人が発見された時で
移動に気を付けた。2週間後だったら行く事はできなかっただろう。

広島大学の両生研に用事があったので研究室を見学させて頂き、その帰りに東広島市の
アキサンショウウオの生息状況を観に行く事にする。
広大の研究室は種の保存法指定種のオンパレードで設備も予想以上にスッごい!

アキは複数の地域タイプに分かれているので指数や体色等、違いを確認したいと考えている。
ちなみに広大内にも生息していたと思う。
東広島市は市指定の保護種なので触ったりはできない。


   
 凄い良い湿地が至る所にある。が、全く見つからん。

アキサンショウウオが好む環境がイマイチ分からないけど
ここは間違いない!と思う場所にいないのは結構凹む...。
なんでこの環境でいないかなぁ〜と逆に考えてしまう。
(上の画像の場所という訳ではない)
時間も少ないので(言い訳)東広島市で見つける事はできなかった。
これだけ本気出して止水性種見つからないの不思議だわ。

 
 翌日は三次市へ向かう。

ここは三次型という地域タイプが分布している。
ここよりも西側では「移行型」という4趾のタイプと三次型の中間的な
アキサンショウウオが分布する事が知られている。
 
 全長8cm程度の小さいサンショウウオ

見つけた個体は後肢の指が4指で、あれ?移行型じゃん?
三次型の分布域なのに?と焦ったが場所によっては4指の場所もあるようだ。
 
 結果として見つける事はできた。

三次もよい湿地が沢山ある。これは間違いない!と何度も思ったけど、やっぱり見つからん!
中々見つからなくて車に戻りがてらヤケクソで返した朽木の下で見つける事ができた。

ただ何この場所?こんなとこを選択するとは全く思ってなかった。
ヒバやハクバなんかでは近いパターンは見た事あるけど止水性種ではあまりないパターンだなぁ。
ネット上では生息環境の画像も載せる事はできないレベル。
そういった発見が面白いのであってネットで買って飼育だけなんて何の意味もない。
習性とか知らないで飼育したって失敗するだけだしね。

四国ではオープンに産んだりするようだけど、どうやら産卵場所は強い隠蔽傾向があるようだ。
あと水の始点が重要なんだな。

ちょっと特殊な環境でしか見つけられてないから色々な場所で見てみたいのぉ。
また色々と出かけなければならぬよ。

この後、4月に流水性サンショウウオを見に行くつもりだったが
コロナウィルスにより、東京都は3月後半から外出自粛ムードとなり、4月16日には
全国的な緊急事態宣言が出され不要不急の外出自粛令が発動されてしまった。
なので涙を飲んで自宅待機とす。残念〜。

 戻るフィールドメモ